先日開催いたしました、”子どもが不登校になったら、仕事はどうする?不登校と貧困について考える”のレポートを公開いたします。
当日ご参加いただけなかった方も、ぜひご覧くださいね!
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1.不登校になったときの、「お金」と「はたらく」
~子どもの不登校は、家庭の貧困問題に大きく影を落とす~
2.不登校になったときの、「子どものこと」
~ 不登校は、さまざまな問題が絡まりあって発生している~
3.最後に
~協力しあえば、無力ではなく微力になる~
不登校と貧困。この2つの言葉は、密接にかかわりあっています。2021年度における不登校の子どもは、過去最多の24万人を突破(文部科学省:問題行動・不登校調査)。不登校問題を根本から解決するためには、貧困問題をまっすぐに見つめる必要があります。
今回のセミナーは、寄付月間(※)の特別企画として開催。認定NPO法人D×P理事長の今井紀明氏をお迎えして、サクラグ代表・遠藤洋之とともに「不登校と貧困」についてじっくりと考えました。
※寄付月間(Giving December):寄付文化を構築するため、全国的に行われる啓発キャンペーンのこと。12月の1ヶ月間を「寄付月間」とし、企業、NPO、大学、行政、個人などが協力して寄付文化を盛り上げていこうとするムーブメントです。
・寄付月間HP https://giving12.jp/
不登校になったときの、「お金」と「はたらく」:子どもの不登校は、家庭の貧困問題に大きく影を落とす
まず、遠藤が自己紹介を交えながら、「不登校が貧困問題につながる可能性」について解説しました。子どもが不登校になった場合、32%の保護者が就労形態に変化があり、25%の保護者が年収ダウンしたというデータを提示。家庭の収入が減少することで、不登校の子どもが貧困に悩まされる危険性が高まるということです。遠藤は、採用マッチングプラットフォーム・「sangoport(サンゴポート)」の運営を通して、不登校の子供を持つ親にはたらき方の選択肢を提供したいと強い気持ちを述べていました。
次に、今井氏により、自身の事業内容に関するご説明をいただきました。今井氏が理事長を務めるD×Pは、不登校や経済的困難をはじめとしたさまざまな問題を抱える子どもたちのセーフティネットを構築する認定NPO法人です。「10代の孤立を解決すること」を目標に掲げ、進路・就職のLINE相談「ユキサキチャット」の運営や、食糧支援・現金給付などを行っています。
不登校になったときの、「子どものこと」:不登校は、さまざまな問題が絡まりあって発生している
続いて、遠藤が今井氏に質問を行うかたちで、さらに深い話が進められました。ここからは、質問とその回答内容について簡単にまとめながら内容をご紹介します。
Q1.D×Pが支援している子供たちの現状について、概要を教えてください。
今井氏「LINE相談の内容からだと、困窮状態の子供がかなり増えていますね。新型コロナウイルスの影響で、ここ2~3年の状況が悪化したと見て取れます。」
「不登校だけではなく、ほかにも複数の問題を抱えている子どもが多いこと」が、コロナ渦の特徴だそうです。問題の具体例は、経済的困窮のほかに、精神疾患の罹患、親からの虐待など。自死を選ぶ子どもも増えており、複雑な問題がからみあっている状態が現状です。
Q2.D×Pで最近取り組みはじめた新しい試みがあれば教えてください。
今井氏「食糧支援・現金給付の活動をはじめたことでしょうか。不登校や中退を経験した子どもの進路・就職に関するLINE相談を行っていくなかで、相談だけでは解決できないものがある現状に気づいたので。」
今井氏によると、不登校以前の問題である、「食糧やお金がないから、学校に行けない」という層が一定数存在するとのこと。この問題を解決するために、貧困への福祉的支援を開始したそうです。
現在の教育現場における課題が浮き彫りになり、遠藤も興味深く耳を傾けていました。今回のセミナーの主題でもある、不登校についてより深くたずねたのが下記の質問です。
Q3.子どもが不登校になってしまう原因とは何ですか。
今井氏「無気力、不安などがトップの原因です。」
「友達や先生にまつわる、人間関係のトラブルでは?」と考えていた遠藤は、この回答には驚いた様子。ほかにも、ネグレクトなどの家庭問題も大きな要因になっているとか。食事を保護者に作ってもらえないため、不健康な状態で登校する子どもも少なくないそうです。
これを聞いた遠藤は、自身の経験を振り返りながら意見を述べました。
遠藤「自分はもともと家庭環境が良くなかったけれど、学校は好きでした。普段の生活の逃げ場所を探していたのかもしれません」
今井氏「学校が逃げ場所になっていたのですね。それはよかったです。いま、家庭にも学校にも逃げ場所がない子どもが増えています。そういった子どもには家出する選択肢しか残されませんから、私たちは食糧支援や現金給付を行っています。」
このほかにもさまざまな質問に答えてくださった今井氏。その中でも多くの使用者の印象に残ったのは、この質問ではないでしょうか。
Q4.不登校に、地域差は関係しますか。
今井氏「関係します。人口が少ない地域の子どもは、本当に孤独ですね。不登校になったあとに通える施設が近くにないため、居場所がなくなってしまうんです。引きこもりを強制されるようなものです。」
住む地域によって環境の差が出ないように、オンラインで学べる環境をどれだけ増やせるかが、今後の課題だと今井氏は語ります。学校に通わずとも、学びが保障される観点が重要です。そのような環境が整えば、子どもの学習環境を整えるために保護者が自身の労働時間をカットしなくて済むため、保護者・子どもの双方にとって価値があります。
また、今井氏は子どもの居場所づくりについてこうも述べていました。
今井氏「これからは、相談できる相手、頼れる相手をとにかく増やすことが大切です。そのために、民間ももっと子どもの居場所づくりに取り組まなければなりません。電話よりLINEを選択するなど、アクセスしやすいサービスを構築することがポイントですね」
最後に:協力しあえば、無力ではなく微力になる
視聴者からも多くの質問が寄せられましたが、そのなかでも特徴的だった質問を2つご紹介します。
Q.不登校や貧困の問題解決のために、個人でできることはありますか。
今井氏「政府が募っているパブリックコメントに、自分の意見を積極的に書いていくことです。そして、NPO法人に協力することですね。」
NPO法人への協力方法は、募金やボランティアへの参加が例にあげられます。お金や時間を使い、問題解決のための実例を出すことがなにより大切です。
また、今井氏によると、意見を政府や自治体に認めてもらうには、グループになって声を上げることが大事だと述べています。個人の意見だけでは聞き入れてもらえないことも、複数人の力を寄せ集めることで、「無力ではなく微力になる」といいます。この言葉に、遠藤も深く共感します。
Q.子供が不登校になって苦しい時、心のもち方に関するアドバイスを教えてください。
今井氏「パートナーがいる場合は、その人とよく対話をすることです。対話の機会がない場合は、苦しみを言葉にして吐き出せる相談先を探すこと。」
苦しい心に蓋をすると子供にあたってしまうため、なるべく泣いた方がいいとも述べていました。ちなみに今井氏は、ステップファザー(連れ子がいる女性と結婚し、その子どもの継父になる男性)であるとのこと。相談先が少なくて困った自身の経験から、悩み事を相談できる環境を整える活動に取り組んでいるそうです。やはり、悩みを気軽に話せたり、他者の力を借りられたりする窓口が必要だということですね。
いつの間にか時間は過ぎ、1時間のセミナーは終わりの時間を迎えました。自治体とも協力しながら、若年層のセーフティネット構築に励んでいるD×P。そして、不登校の子どもを持つ保護者などに対して、多様なはたらき方を通して支援を行うサクラグ。両団体の代表は、現代社会が抱える大きな問題を解決するために、知識を分け合う貴重な時間を過ごせたようです。
不登校問題も、貧困問題も、子どもの美しい未来を阻害する障壁です。世界中の子どもたちが笑顔で過ごせるように、いま自分たちにできることを始めてみませんか。今回のセミナーをきっかけにして、D×PをはじめとしたNPO法人に寄付をしてみましょう。
・D×P寄付サポーターのご案内
https://www.dreampossibility.com/supporter/
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